新橋の菓子店、新正堂(しんしょうどう)が「義士ようかん」を売り出している。店主は忠臣蔵マニア。江戸後期の浮世絵師・歌川国芳が描く四十七士の武者絵で、ひとくちサイズの47本を包んだ。「義」の字の1本を加えた48本セットで1万1千円。
 新正堂は、浅野内匠頭が切腹した一関藩主田村右京大夫の江戸藩邸跡に1912年、創業した。「義士ようかん」は3代目の渡辺仁久さんが構想を温めていた品だ。四十七士を描く国芳の「誠忠義士伝」の武者絵を包装に使いたかったが、図録が手に入らない。昨春、府中市美術館で開かれた国芳の木版画展に足を運んだところ、英語版の図録が1部だけ売店に残っていた。(略)
 ようかんは、本煉、黒糖、抹茶、赤穂産を使った塩、浅野内匠頭の辞世の歌にちなんだ「さくら」の5種類。赤穂浪士討ち入りの日にあたる昨年12月14日に発売した。1本200円、5本セットで1100円。(略)
 忠臣蔵がテーマの菓子は90年発売の「切腹最中」が最初だ。割れた皮の間から餡がはみ出す見た目、穏やかではない名は周囲の猛反対にあったが、岸朝子さんの著書「東京五つ星の手みやげ」にも紹介され、やがて人気商品に。(略)
 義士ようかんの包装紙にQRコードをつけた。携帯電話で読み取ると、各義士の人となりの紹介などが表示される。忠臣蔵の「語り部菓子」となるのが店主の願いだ。


朝日新聞2011年5月11日〜新橋の菓子店主考案 武者絵あしらい販売(田中啓介氏による)〜より紹介しました