日本列島に桜前線がやってきました。デパートの地下食品売り場やカフェでは、花をかたどったピンクのマカロン、花の塩漬けをあしらったモンブランなど桜のスイーツ、飲料が並んでいます。(略)
 和菓子材料を販売する山眞産業は、桜葉漬、桜花漬、パウダー、ペースト、フリーズドライ、ミンチなど、約30種類の桜素材を扱っている。「この3年、売り上げは毎年25%のペースで伸びています」と営業部の若山さんは話す。当初は和菓子が中心だったが、パウダーやフレークなど商品開発に力を入れた結果、次第に洋菓子、料理と用途が広がり、飲料にも使われるようになってきたという。
 桜味とはいうものの、桜にもともとはっきりとした味わいがあるわけではない。桜の花は塩漬けや梅酢漬にして食用にしている。桜の葉を塩漬けにすると発酵して「クマリン」という物質が生まれる。これが桜餅に代表される独特の香りのもと。「葉で香りをつけて、花で色をつける、という使い方です」と若山さん。
 こうした減少についてスイーツコーディネーターの平岩理緒さんは「最近フランス菓子のパティシエが抹茶やユズを使うように、和の素材に注目が集まっている一つの表れ」と話す。また、日本の菓子業界では、常に季節感のある季節限定商品を求める傾向にある。従来春といえばイチゴだったが、近年は果物の出荷時期が早まっており、これに合わせイチゴスイーツのフェアも1〜2月に行われることが多い。その後の3〜4月にぴったりな季節素材として、桜の存在感が増しているとも言える。「桜には大和祝いや縁起のよいイメージがあり、卒業や入学のプレゼントにも重宝。季節をめでる日本の文化にぴったり。単なる一時期の流行というより、春の定番として定着していくのでは」と平岩さんはみている。


朝日新聞2010年3月19日〜桜前線お菓子にも 和素材人気が後押し〜より紹介しました